App Store 価格設定:国別に価格を決める方法
著者:Mehdi Azizi
公開・9 分
price tierは廃止済み。Appleは900の価格を用意し、基準国から175か国の価格を自動計算します。国ごとの手動設定も可能です。
App Storeのprice tier(0.99ドルから始まる番号付きの価格帯)は、2023年に廃止されました。現在のAppleは0.29ドルから10,000ドルまで900の価格を用意していて、あなたの基準国の価格から175か国の同等価格を計算します。計算には為替レート、一部の税金、各国でよく使われる端数処理が反映されます。そのうえで、どの国の価格も手動で上書きできます。
2026年10月、僕は自作の小さなエンジンを使って、Solys、TradaZen、Noleraの3つのアプリの価格を国ごとに設定し直しました。この記事では、Appleの仕組み、僕のやり方、数字を使った例、そして落とし穴を紹介します。ルールは2026年10月15日にApp Store Connectのヘルプで確認しました。
App Store price tier:2023年に何が変わったか
2022年までは、価格帯(tier)を1つ選ぶと、Appleがそれを各通貨に展開していました。この仕組みは2022年12月のAppleの発表で置き換えられました。まずサブスクリプションがすぐに対象になり、続いて2023年3月9日にすべてのアプリとApp内課金に広がりました。
現在あるのは次のとおりです。
- 通貨ごとに800の価格がデフォルトで使え、申請すればさらに高い100の価格(最大10,000ドル)も使えます。
- 刻みは10ドルまでが0.10ドル、50ドルまでが0.50ドルです。
- 各国の端数処理として、X.99の価格に加えてX.00やX.90なども使えます。
2023年5月9日、Appleは既存のアプリと買い切りアイテムの価格を米国価格をもとに再計算しました。ただし3月8日以降に変更したものは除きます。古いアプリでは、基準国がまだ米国のままかもしれません。
「price tier list」を探していますか? それはApp Store Connectの中にあります。価格メニューにはその国でよく使われる25の価格が表示され、See Additional Pricesを押すと全リストが開きます。APIでは、GET /v1/subscriptions/{id}/pricePointsを国で絞り込むと、各価格(customerPrice)とあなたの推定取り分(proceeds)が返ってきます。
自動価格か、手動で決める価格か
基準国と価格を1つ選びます。アプリの価格設定に関するヘルプによると、Appleはそれをもとに残り174か国の同等価格を提案します。この自動価格をそのまま使ってもいいし、一部の国、あるいは全部の国を自分で設定することもできます。
違いが出るのは、為替レートや税金が変わったときです。
| 価格 | アプリ、買い切り | サブスクリプション |
|---|---|---|
| 基準国 | 調整されない | 調整されない |
| その他の国(自動) | Appleが調整する | 調整されない |
| 手動で設定した国 | 以後は調整されない | 調整されない |
自分で設定した国については、App内課金に関するヘルプのとおり、税金と為替レートの追跡はあなたの責任になります。
サブスクリプションは、Appleが調整することは一切ありません。サブスクリプションの価格に関するヘルプにも書かれていますが、税金や為替を理由にAppleが行う価格変更はサブスクリプションを対象外としています。ある国の付加価値税が変わっても価格はそのままで、変わるのはあなたの取り分です。
フランスでは、表示価格に20%の付加価値税(TVA)が含まれていて、取り分は付加価値税を差し引いたあとに計算されます。だから国どうしは表示価格ではなく、取り分で比べてください。
Appleの同等価格だけでは足りなかった理由
自動価格がそろえるのは金額の価値であって、購買力ではありません。2026年10月より前、僕のサブスクリプションはフランスを基準にしたこの同等価格に従っていました。そのため、インド、ブラジル、エジプトでは、換算するとフランスとほぼ同じ値段でした。スイスではフランスより安くなっていました。
競合アプリの価格も、30ほどのストアフロント(各国のストア)で調べました。どこでもほぼ同じ価格のアプリもあれば、新興国で大きく値下げしているアプリもあります。唯一のルールはなく、あるのはあなたのニッチだけです。
国別価格を決める僕のやり方
僕のエンジンは国ごとに係数(フランスを1とする)を計算し、それをフランスの価格に掛けます。
- フランスを基準にする。エンジンはフランスの価格を一切変えません。
- 購買力。世界銀行が公表している購買力平価ベースの1人あたり国民総所得を使い、その国の値をフランスの値で割ります。この比率を0.48乗します。こうすると、価格の差は所得の差より小さく収まります。
- 競合。主要国については、この係数に直接の競合アプリの中央値価格(各アプリのフランス価格に対する比率)を混ぜます。
- 下限と上限。アプリや商品によって、どの国もフランス価格の0.40~0.70倍を下回らず、1.35倍を超えないようにします。
- 純収益の下限。アプリが利用のたびにAPI料金を払う場合に設定します。
- 1つの国ではすべての商品に同じ係数を使う。週額、月額、年額の差を保つためです。
- 端数処理。その国の価格らしい末尾になる、もっとも近いAppleの価格を選びます。ユーロとドルなら4.99や9.99、レアルなら9.90、ルピーなら99、円なら00です。現在の価格が目標から7%以内なら、そのまま残します。
例:39.99ユーロの架空の年額サブスクリプション
この表は例であって、僕の価格表ではありません。手法を簡略化したもので、購買力のみ(競合なし)、下限0.45、上限1.35で計算しています。所得は世界銀行の2024年データ、為替レートは2026年10月10日のもの、価格はその日App Store Connectで実際に選べたものです。
| 国 | 係数 | 例の価格 | ユーロ換算 |
|---|---|---|---|
| フランス(基準) | 1.00 | 39.99ユーロ | 39.99ユーロ |
| スイス | 1.21 | 45 CHF | 48.36ユーロ |
| 米国 | 1.15 | 49.99ドル | 44.61ユーロ |
| ドイツ | 1.09 | 44.99ユーロ | 44.99ユーロ |
| 英国 | 0.99 | 34.99ポンド | 41.31ユーロ |
| 日本 | 0.95 | 6,800円 | 38.35ユーロ |
| ポーランド | 0.89 | 154.99 zł | 35.37ユーロ |
| メキシコ | 0.64 | 529 MXN | 25.75ユーロ |
| ブラジル | 0.60 | 134.90 R$ | 24.04ユーロ |
| インドネシア | 0.52 | 409,000 Rp | 20.43ユーロ |
| インド | 0.45 | 1,999 ₹ | 18.45ユーロ |
注目してほしい行が2つあります。ドイツはフランスより高くなりますが、ドイツでは既存の購読者に値上げを適用するには同意が必要です。これは後で説明します。英国は、為替レートと端数処理のせいで、ユーロ換算ではフランスより高くなっています。
価格を設定する:管理画面かAPIか
管理画面では、サブスクリプションの場合、国と価格を1つ選ぶと、App Store Connectが175か国の同等価格を表示します。変えたい国を修正して、確定します。いちばん早い適用日は、通常1~2日後です。
APIでは、ガイドConfiguring subscription prices across territoriesが手順を説明しています。
GET /v1/subscriptions/{id}/pricePointsで1つの国の価格を取得する。adjustedEqualizationsで他の国の同等価格を取得する。POST /v1/subscriptionPricesで各価格を設定する。開始日を指定し、既存の購読者にはpreserveCurrentPriceを使う。GET /v1/subscriptions/{id}/pricesで確認する。
一括で設定する呼び出しはありません。国ごと、商品ごとに1回呼び出します。僕が学んだことは次のとおりです。
- 国とプランごとに、予定価格は1つだけ。管理画面では、2つ目が1つ目を上書きします。APIでは、予約済みの古い価格を
DELETE /v1/subscriptionPrices/{id}で削除するまで、新しい呼び出しが拒否されました。 - 最初のエラーで止まるスクリプトにして、重複なしで再実行できるようにし、テストモードも用意する。
- 設定後に見直す。適用日の前に、抜けている予定価格を数えます。
国別価格の落とし穴
値上げ。サブスクリプションを値上げすると購読者に通知が届きます。値上げ幅が価格の50%を超え、かつ1期間あたり約5ドル(年額なら年50ドル)を超える場合は同意が求められます。12か月以内に再度値上げした場合や、国が義務づけている場合も同意が必要です。しきい値の表では、ドイツ、オーストリア、ポーランド、韓国が「同意が必要」となっています。僕はいつも、値上げのたびに既存の購読者の現在の価格を維持しています。有効期限が切れてから60日以内に再購読した人も、その価格に戻ります。
値下げ。値下げは現在の購読者に自動で適用され、旧価格を維持する選択肢はありません。一度適用された値下げは取り消せません。
不安定な通貨。Appleはサブスクリプションを一切調整しないので、通貨が暴落すると、価格は変わらないまま取り分が目減りします。僕はトルコ、アルゼンチン、ナイジェリア、エジプトを四半期ごとに見直しています。
基準国。アプリや買い切りアイテムでは、基準国を変えると予約済みの価格変更が消えます。
ペイウォール。国別の価格表にすると、端数処理のせいで週額と年額の差が国ごとに変わります。StoreKitが返す価格を表示し、コードに価格を直書きしないでください。割引率も現地価格で計算します。ガイドライン3.1.2では、請求額がもっとも目立つ価格であることも求められています。
価格表を設定する前のチェックリスト
- 各国の係数を計算した(購買力、次に競合)。
- 下限、上限、純収益の下限を適用した。
- 各価格が、現地らしい末尾のAppleの実在する価格になっている。
- 同意が必要な国を把握した。
- 値上げのたびに既存の購読者の価格を維持している。
- 予約済みの古い価格を削除した。
- 適用日まで少なくとも2日ある。
- ペイウォールが現地価格を読み込み、それをもとに割引を計算している。
- 設定後の見直しで抜けがない。
- 4週間後に国別の振り返りを予定している(インストールあたり収益、トライアル、解約)。
いつやるべき?ある国で広告にお金をかける前、そして不安定な通貨については四半期ごとです。それから、価格、トライアル、ペイウォールを同じ日に変えないでください。ペイウォールのよくあるミスも読んでみてください。
手探りせずに価格を決める
国別価格の前に、まずはビジネスモデルです。サブスクリプションか買い切りかを決めましょう。また、取り分は手数料で決まり、Small Business Programなら15%に下がります。
iOS & Android Kitは、僕のアプリのスターターコードがベースで、ペイウォールとサブスクリプションは実装済み。自分のペースで進められます。全体の流れはiOSのApp内サブスクリプションのページにまとめています。そして、あなたのプロジェクトで何が詰まっているかを知るには、無料診断を受けてください。Appleのリジェクト対策チェックリストも届きます。
よくある質問
App Storeのprice tierとは何ですか?
番号付きの価格帯で、Appleが各通貨に展開していたものです。2023年からは、通貨ごとに900の価格(うち100は申請制)と、他の国の価格を計算するための基準国に置き換えられました。
App Storeの価格リストはどこで見られますか?
App Store Connectで、アプリやサブスクリプションの価格ページを開き、See Additional Pricesを押すと全リストが表示されます。APIでも、国ごとに顧客価格とあなたの推定取り分が返ってきます。
国ごとに違う価格を設定するにはどうすればいいですか?
基準国で価格を設定し、確定する前に、同等価格の画面で好きな国を修正します。APIでは、国ごと、商品ごとに1回呼び出します。
為替レートが変わると、Appleは価格を変えますか?
アプリや買い切りアイテムでは、自動価格の国についてはYESです。ただし、基準国や手動で設定した国は変わりません。サブスクリプションは一切変わりません。
値上げ後も、既存の購読者は今の価格のままですか?
既存の購読者の現在の価格を維持する設定を選べば、そうなります。選ばなければ、値上げ幅と国に応じて、通知か同意の依頼が届きます。値下げは常にすべての購読者に適用されます。
App Storeの価格には付加価値税が含まれていますか?
フランスでは含まれています。表示価格には20%の付加価値税が含まれます。取り分は、付加価値税を差し引き、さらにAppleの手数料を引いたあとに計算されます。

