韓国App Storeの外部決済と手数料26%
著者:Mehdi Azizi
公開・10 分
韓国ではKCP、Inicis、Toss、NICEで決済でき、手数料は26%で専用バイナリが必要です。小規模開発者にはアプリ内課金より割高です。
韓国では、韓国のストアだけで配信しているアプリなら、Appleのアプリ内課金の代わりにKCPやTossなど現地の決済代行会社で購入代金を受け取れます。その場合、Appleはユーザーが支払った税込価格の26%を取り、さらに決済代行会社の手数料がかかります。 Small Business Programのおかげでアプリ内課金なら15%で済む小規模開発者にとって、この選択肢は割高です。
このガイドでは、正確なエンタイトルメント、韓国専用バイナリ、料率、各ステップを、2026年10月27日に読み直したAppleのページに基づいてまとめます。僕自身はこの選択肢を試していません。後半の数値例は計算であって、実測ではありません。韓国でもアプリ内課金は引き続き使えますし、それがデフォルトの選択です。ほかの国の例外はガイドライン3.1.1のガイドにまとめています。日本とブラジルはそれぞれ専用のガイドがあります。
韓国の選択肢でできること
韓国に関するAppleのページ(韓国語版もあります)によると、すべての出発点は韓国の電気通信事業法(Telecommunications Business Act、전기통신사업법)の改正です。韓国のApp Storeだけで配信するアプリは、アプリ内課金を別の決済代行会社に任せられます。 Appleはこの権利をStoreKit External Purchase Entitlementと呼んでいます。
ほかのすべてを縛るルールは3つです。
- エンタイトルメントは韓国ストアのiOSまたはiPadOSアプリにしか使えません。
- 対象は韓国だけで配信する新しいバイナリです。
- 同じアプリの中でAppleのアプリ内課金と併用できません。
決済はアプリ内で、あなたの決済代行会社を通して行います。ページはWebサイトへのボタンを想定していません。ユーザーがアプリの外に出るのは、購入を完了するために法律上必要な場合だけです。
26%の手数料がカバーするもの
Appleが請求するのは**ユーザーが支払った価格の26%**で、「gross of any value-added taxes」、つまり税込価格が基準です。Appleはこの料率を、決済処理を含まないので引き下げた料率だと説明しています。その決済処理は、決済代行会社が別途あなたに請求します。
アプリ内課金と比べて変わる点は3つです。
- 税金はあなたの負担になります。韓国向けエンタイトルメントの補足契約によると、税金の徴収と納付はあなたが行います。
- ページには引き下げ料率が一切載っていません。Small Business Program向けも、1年経過後のサブスクリプション向けもありません。
- 計算の基準に付加価値税が含まれます。一方、アプリ内課金の手数料は、Apple Developer Programライセンス契約のSchedule 2第3.4条により、徴収された税金を除いた価格で計算されます。
「27%」という数字を見かけることもあります。これはオランダの出会い系アプリなど別の制度の料率で、Appleが手数料を3ポイント下げるものです。韓国については、Appleのページには26%と書かれています。
認定済みの決済代行会社
Appleは韓国ストア向けに認定済みの決済代行会社を4社挙げています。KCP、Inicis(이니시스)、Toss(토스)、NICEです。
別の会社を提案することもできます。その場合、Appleはセキュリティ、不正対策、決済手段、サブスクリプション請求、Appleへ手数料を直接支払う能力を審査します。リスト外の会社を選ぶと、申請が遅れたり却下されたりする可能性があります。
エンタイトルメント1つにつき決済代行会社は1社だけで、変更には更新用のフォームを使います。決済データを自分で保存したり送信したりはできません。各社の手数料はAppleのページに載っておらず、僕も調べていません。各社に直接問い合わせてください。
韓国専用バイナリ
すべてを左右するのがこの制約です。エンタイトルメントは、App Storeで一度も公開されていないバンドルIDに対して申請します。 つまり今のアプリには付与されません。独自のバンドルIDを持つ、韓国だけで配信する別のアプリを作ることになります。
- このバイナリにはAppleのアプリ内課金を含めません。
- 新しいアプリが、すでにアプリ内課金で販売しているアプリの別バージョンなら、Appleが新アプリを承認する前に旧アプリを韓国ストアから取り下げる必要があります。
- 新アプリは独自のストアページを持つので、韓国では旧アプリの評価や履歴なしでスタートします。
結果として、アプリ内課金を使う世界向けアプリと、決済代行会社を使う韓国向けアプリの2つを保守することになります。アップデートのたびに2回審査に出します。
26%か15%か:小規模開発者の計算
Small Business Programに登録すると、純収益(proceeds)が暦年で100万ドル未満である限り、アプリ内課金の手数料は15%になります。このページには韓国向けの例外はなく、EUに関する例外が1つあるだけです。条件の詳細はSmall Business Programのガイドにあります。
税込10,000ウォンの購入を例にします。計算の前提は、あなたが韓国の居住者ではないこと、価格に10%の付加価値税が含まれていることです(税理士に確認してください)。決済代行会社の手数料は含めていません。
| 10,000ウォンの支払いあたり | Small Business | 標準料率 | 外部決済 |
|---|---|---|---|
| 手数料の計算基準 | 9,091ウォン | 9,091ウォン | 10,000ウォン |
| Appleの料率 | 15% | 30% | 26% |
| Appleの手数料 | 1,364ウォン | 2,727ウォン | 2,600ウォン |
| 付加価値税909ウォン | Appleが納付 | Appleが納付 | 自分で納付 |
| 決済手数料 | 込み | 込み | 別途 |
| 手元に残る額 | 7,727ウォン | 6,364ウォン | 手数料前で6,491ウォン |
表からわかること:
- Small Business Programと比べると、外部決済では決済代行会社の手数料を引く前の時点で、1件あたり1,236ウォン、手元に残る額の16%を失います。
- 標準料率の30%と比べると127ウォン、価格の1.3%得します。30%と26%の4ポイントの差は、26%が税込価格にかかるため1.3ポイントまで縮みます。
- 標準料率のサブスクリプションの場合、同じ第3.4条により、有料サブスクリプションが1年続くとアプリ内課金の手数料は15%に下がります。外部決済は26%のままで、韓国向けページには引き下げの記載がありません。
「外部決済」の列にはすべてが入っているわけではありません。2つ目のバイナリの保守、毎月の売上報告、決済に関するカスタマーサポート、自分で行う付加価値税の申告も加わります。
外部決済がアプリ内課金に勝つのは、あなたが30%を払っていて、決済代行会社のコストが価格の1.3%未満の場合だけです。
方法と限界
Appleの韓国向けページ、Small Business Program、ライセンス契約のHTMLを、自動要約に頼らず読みました。計算の根拠となるルールは3つです。外部決済は税込価格の26%、アプリ内課金は徴収された税金を除いた価格に対する手数料(Schedule 2第3.4条)、韓国の非居住者の開発者については付加価値税をAppleが納付すること(Schedule 2のExhibit B)です。
韓国の居住者であれば、アプリ内課金でも付加価値税は自分で納付します。その場合、Appleは手数料を計算する前に推定付加価値税を価格から差し引き(Exhibit B)、その手数料に韓国の付加価値税を上乗せします(Exhibit C第7条)。計算は税理士にやり直してもらってください。
限界:10%の付加価値税は仮定です。決済代行会社の手数料は含めておらず、実地テストもしていません。
エンタイトルメントを取得する手順
- 実際の価格で計算し直します。決済代行会社が提示する手数料も入れてください。
- 認定済みの決済代行会社を選びます。KCP、Inicis、Toss、NICEのいずれかです。サブスクリプションを販売するならそれに対応しているか、決済フローがネイティブかを確認します。
- 新しいバンドルIDを用意します。一度も公開されておらず、韓国向けアプリ専用のものです。
- アカウント保有者(Account Holder)として申請フォームに記入します。Appleが求めるのは、アプリ名、説明、バンドルID、決済代行会社、Webサイトのドメイン、カスタマーサポートサイトのURLです。エンタイトルメントの規約にも同意します。
- Appleからの確認メールを待ち、Certificates, Identifiers & ProfilesでApp IDのエンタイトルメントを有効にします。
- バイナリと必要なStoreKitのコードを設定します。詳しくは後述します。
- App Store Connectでストアページを作成し、配信地域を韓国だけに限定します。
- 決済代行会社が決済を受け付けられる状態になったらアプリを提出します。ユーザーに情報を示す画面のスクリーンショットも添えます。新アプリが韓国でアプリ内課金で販売しているアプリの別バージョンなら、旧アプリをそのストアから取り下げます。
Appleは注意を促しています。書類が不完全だったり決済代行会社が認定外だったりすると、審査が長引くか却下につながります。
バイナリの設定:XcodeかExpoか
エンタイトルメントはiOS 15とiPadOS 15以降で動作します。Xcodeでは2つのファイルを変更します。
.entitlementsファイルにエンタイトルメントを追加します。
- キー:
com.apple.developer.storekit.external-purchase - 型:Boolean
- 値:
true
Info.plistには、文字列の配列型でSKExternalPurchaseキーを追加し、韓国の国コードを入れます。Appleの韓国向けページにはKRと書かれています。キーのリファレンスでは小文字のコードが求められ、韓国はkrと記載されています。僕なら技術リファレンスに合わせてkrにします。
次のビルドで、Xcodeはプロビジョニングプロファイルが一致しなくなったことを検出し、新しいものを要求します。
Expoでは、2つのキーをapp.jsonのios.entitlementsとios.infoPlistで設定します。
{
"expo": {
"ios": {
"bundleIdentifier": "com.example.myapp.kr",
"entitlements": {
"com.apple.developer.storekit.external-purchase": true
},
"infoPlist": {
"SKExternalPurchase": ["kr"]
}
}
}
}
バンドルIDは架空の例です。1つのプロジェクトのまま2つのアプリを出すには、Expoがapp.config.jsを使ったアプリバリアントを解説しています。世界向けバリアントはアプリ内課金を維持し、韓国向けバリアントにこれらのキーを入れます。RevenueCatのガイドのようにアプリ内課金につないだいつものペイウォールは、世界向けバリアントに残します。韓国向けバリアントには、無効化した状態であってもアプリ内課金を含めないでください。 Appleは隠れた決済機能や休眠中の決済機能を禁止しています。一方、後述の必須StoreKit呼び出しは残します。これらはSwiftで書くので、Expoの場合はExpo Modules APIなどでネイティブモジュールを用意してください。
情報シートと決済フロー
Appleは3つのStoreKit呼び出しを義務づけています。
- 購入フローや決済情報の入力フローの前に毎回
canMakePaymentsを確認すること。ユーザーが支払いを許可されているかを確かめます。 - Appleの情報シートを表示すること。iOS 15.4以降ではStoreKit External Purchase APIの
presentNoticeSheet()を使います。 - このAPIを呼ばない場合は、
StorefrontまたはSKStorefrontでストアを確認すること。フローの前に毎回、ユーザーのストアが韓国である必要があります。
presentNoticeSheet()のドキュメントには2つのルールが追加されています。まずiOS 17.4以降で使えるExternalPurchase.canPresentを確認すること、そしてボタンのタップのような、ユーザーの意図的な操作の後にだけシートを開くことです。ユーザーが先に進まなければ、外部購入は表示しません。
iOS 15.0から15.3では、Appleが提供するデザインと文言をそのまま再現します。どの場合も、ユーザーが「계속」(続ける)をタップするまで、シートは購入や決済手段の入力の前に毎回、端末ごとに表示されます。
韓国語のタイトルは「이 앱은 App Store의 안전한 비공개 지불 시스템을 지원하지 않습니다.」です。このアプリはApp Storeの安全な決済に対応していない、という意味です。本文では、サブスクリプションの管理、ファミリー共有、Appleによる返金が利用できないことを警告しています。
決済フロー自体には、次の条件があります。
- ネイティブでアプリ内にあること。Web viewは不可です。
- 隠れた、休眠中の、または文書化されていない決済機能がないこと。
- 誤解を招く手法を使わないこと。違反するとAppleはアプリを削除し、プログラムから除外することもあります。
コードを1行でも書く前に、決済代行会社に決済モジュールがWeb viewで開くかどうかを確認してください。
リリース後:報告、請求、サポート
- 毎月の売上報告:Appleのページからリンクされたフォームで、Appleの会計月の終了後15暦日以内に提出します。Appleがレポートの例を用意しています。
- 請求書:会計月の終了後45日以内に支払います。
- 監査権:Appleは申告内容の正確さを監査できます。
- 未払いの場合:Appleはほかの国であなたに支払う金額と相殺したり、アプリを削除したり、プログラムから除外したりできます。
- カスタマーサポートはあなたの担当:Appleはこれらの購入を把握できないので、返金も履歴もサブスクリプション管理も扱いません。
韓国の規制当局の動き
2026年10月27日に再確認しました。2023年、韓国の通信規制当局(当時は방송통신위원회)は、自社の決済システムを強制したとしてAppleとGoogleへの制裁案を発表しました。Digital Dailyによると、2025年の法律でこの機関は방송미디어통신위원회に置き換えられました。SBS Bizによると、2026年10月12日、委員長は月内の決定を見込んでいました。10月27日には同じメディアが、10月28日の全体会議で最終議決が行われる可能性が高いと報じました。
同じ日、CBS Nocut Newsによると、まだ1つの論点が議論されていました。AppleやGoogleの決済システム外での支払いについて、アプリがユーザーに知らせ、そちらへ誘導することを、AppleとGoogleに認めさせるかどうかです。いわゆる「アンチステアリング」義務です。
2026年10月27日時点で決定は出ておらず、ここで説明したルールはその日時点のAppleのページに基づいています。 制裁によってルールが変わる可能性があり、特にこの情報提供の権利が義務化されれば影響は大きいでしょう。申請を始める前に、Appleのページと韓国の報道を読み直してください。
韓国専用バイナリを作るべきか
| あなたの状況 | 僕のアドバイス |
|---|---|
| Small Business Programのメンバー | アプリ内課金を続ける |
| 標準料率で、手数料が1.3%超 | アプリ内課金を続ける |
| 韓国ですでに評価のあるアプリ | アプリ内課金を続ける |
| 標準料率で、手数料が1.3%未満 | すべてを計算し直す |
ほとんどの個人開発者にとって、答えはノーです。得られる可能性のある利益は小さく、しかも標準料率の場合だけですが、固定コストは確実にかかります。 そのエネルギーはほかに使うほうが稼げます。サブスクリプションか買い切りかで解説した適切な価格モデルや、モバイルアプリはいくら稼げるかで紹介した現実的な収益です。
よくある質問
韓国の外部決済でAppleの手数料はいくらですか?
ユーザーが支払った税込価格の26%です。これに決済代行会社の手数料が加わり、税金の徴収と納付はあなたが行います。
韓国でAppleが認める決済代行会社はどこですか?
KCP、Inicis、Toss、NICEが認定済みです。別の会社を提案することもできますが、Appleの審査が必要で、申請が遅れたり却下されたりする可能性があります。エンタイトルメント1つにつき1社だけです。
韓国で同じアプリにアプリ内課金と外部決済を両方入れられますか?
いいえ。エンタイトルメントは同じアプリの中でAppleのアプリ内課金と併用できません。韓国だけで配信する別のバイナリが必要です。
公開済みのアプリに外部決済を追加できますか?
いいえ。エンタイトルメントは一度も公開されていないバンドルIDにしか付与されません。新アプリが、韓国でアプリ内課金で販売している今のアプリの別バージョンなら、新アプリの承認前に今のアプリを韓国ストアから取り下げてください。
Small Business Programは韓国の外部決済にも適用されますか?
韓国に関するAppleのページには引き下げ料率が一切載っていません。Small Business Programの15%はアプリ内課金に対するものです。だからこそ、小規模開発者にとってはアプリ内課金のほうが安くなります。
海外の開発者も韓国で外部決済を使えますか?
Appleのページは韓国に拠点があることを求めておらず、対象は韓国だけで配信するアプリです。ただし、これらの売上にかかる韓国の税金はあなたの責任になります。アプリ内課金なら、非居住者の場合はAppleが代わりに納付してくれます。韓国に法人がない事業者を受け入れるかどうかも、決済代行会社に確認してください。
韓国の外部決済にはどのInfo.plistキーが必要ですか?
SKExternalPurchaseです。韓国の国コードを入れた文字列の配列で、キーのリファレンスによればkrです。エンタイトルメントはcom.apple.developer.storekit.external-purchaseで、trueに設定するブール値です。
韓国の規制当局はすでにAppleに制裁を科しましたか?
この再確認を行った2026年10月27日時点では、まだです。決定は出ていませんでした。SBS Bizによると、その時点で10月28日に最終議決が行われる可能性が高いとされていました。判断する前に韓国の報道とAppleのページを読み直してください。
出典
- Distributing apps using a third-party payment provider in South Korea、Apple Developer:条件、決済代行会社、設定、手数料、報告。韓国語版。
- App Store Small Business Program、Apple Developer:15%の手数料とその条件。
- Apple Developer Program License Agreement、Schedule 2第3.4条とExhibit B、C:手数料の計算基準と税金の徴収。
- SKExternalPurchase、External Purchase、presentNoticeSheet()、Appleのドキュメント。
- アプリの設定、アプリバリアント、Expo Modules API、Expoのドキュメント。
- SBS Biz、2026年10月12日と2026年10月27日、およびCBS Nocut News、2026年10月27日:規制当局の決定のスケジュールと論点。Digital Daily、2025年9月27日:방송미디어통신위원회の発足。
アプリに適正な価格をつける
決済の仕組みを選ぶ前に、無料診断を受けてみてください。プロジェクトで本当につまずいている点がわかり、僕のApple審査リジェクト対策チェックリストも届きます。
iOS Kitには、僕のアプリのStarter Codeが入っています。オンボーディング、ペイウォール、サブスクリプションはアプリ内課金ですでに実装済みで、App Storeまでの4ステップの流れも自分のペースで進められます。App Store Connectでのプロダクト作成からペイウォールまで、サブスクリプションの組み立て全体はiOSのアプリ内サブスクリプションで詳しく解説しています。